スカイクロラシリーズ読み返してみた

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

スカイ・イクリプスが文庫で出たのを機に、スカイクロラシリーズを読み返してみた。ナバテア、ダウンツ・ヘヴンとまあまあふんふんと読んでて、それでこのシリーズで言えることは、怪我をして病院に入ったら、なかなか出られなかったりひどい目に遭ったりするってことかな。病院には入らないほうが良いかも。


フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

クリタ・ジンロウ、ってシリーズで一番、割食ってる人物って気がする。最初読んだ時はなんとなく草薙氏へのあこがれというか、報われない恋愛関係って気がしたのだが、もっかい読んだらもう、報われない母子関係にしか見えなかった。いや報われてるって気もするが。で父親に殺されるです。映画スカイクロラで描かれた方向ですね。しかしどことは言わないけれど、この本読んでて不覚にも涙が出ました。シリーズの中で一番好きかも。
最後のところで不時着して、歩いて帰ろうとか言ってたのに、その後のエピローグで、言葉がわからないほど壊れてるのはどういった訳だろう?
1)じつは壊れていた。
2)薬の影響
3)同じく大怪我を負った草薙の脳を、栗田の身体に移植した。
4)ここから草薙の話になっている。
最初3)かと思ったのだが、まあ、4)と思いたいな。


クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)

クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)

きみは誰?っていう話。どこで入れ替わったのかな?と思うんだが、最後のほうで相良が死んだ後、草薙がフーコの煙草を持っていることから、最初から「僕」は草薙だったことがわかる。「僕」は、薬のために自分が誰だかわからないというのがトリックになっている。では何故フーコは草薙を見て栗田だと思ったのだろう?上の3)でもいいんだけど、相良が入院中の「僕」に注射をして、「僕」をキルドレに戻したというのが宙に浮いてしまうので、
キルドレに戻す方法は、女→男への性転換だった + 草薙と栗田は顔がとても似ていた(親子だから) を採用したいな。
その後、記憶を消して草薙は函南になったという話。


スカイ・クロラ (中公文庫)

スカイ・クロラ (中公文庫)

ここでスカイ・クロラに戻るんだけど、時系列では最後といえ、書かれたのは最初なので、とても濃い。世界観が確立しているというか、もう、これだけで十分、ってくらい書かれてる。登場人物がやたらとアメリカナイズされてて、アメリカンジョークを言うとか、やたらビールを飲むとかが結構好きだ。読んでるとビール飲みたくなる。あと、設定が、シリーズ後半作と微妙に違うですよね。瑞季が草薙の子どもとされてたり。スカイ・イクリプスでは瑞季が草薙の背を追い越しているので、キルドレではない。一方、ナ・バ・テアでは中絶した胎児はキルドレなので、死なずに生きることになっており、つまり瑞季は本当に妹ということになる。あと、栗田が死んでからすぐにその代わりに函南が来たことになってて、クレイドゥ・ザ・スカイと矛盾する。多分、スカイクロラで謎を提示して、それを補完する意味で連作する予定だったんだけど、途中で森先生が、スカイ・クロラスカイ・クロラの世界でいいやと思ったんじゃないかな。
んで、スカイ・イクリプスに戻るわけなんですが、Doll of Gloryで、草薙が、「誰?あんた」と言われていることから、栗田と逃げていたのはフーコではないことがわかる。Waning Moonで、副船長が「海は、なにものも、浄化します」て言うのが深いっていうか怖い。Doll of Glory、Ash on the Skyでの函南の穏やかな暮らしっぷりがいいな。ひとつ、フーコに草薙がお金をあげたのが、いつなのか謎が残るけれど。