伊豆はいいですね

王国〈その1〉アンドロメダ・ハイツ (新潮文庫)

王国〈その1〉アンドロメダ・ハイツ (新潮文庫)

よしもとばななさんの王国、書店で見たら3巻まで文庫で出てて、1巻のアンドロメダハイツを買いました。最初アルゼンチンババアかと思って、それなら読んだよなあと思ったのですが、違うことを確認して買ったのでした。しかしそれでも読み進むうちに既読感が。家人に言ったら以前単行本を持っていて、うちにもあったそうです。そうか。

これは、私と楓をめぐる、長く、くだらなく、なんということのない物語のはじまりだ。童話より幼く、寓話にしては教訓が得られない。愚かな人間の営みと、おかしな角度から見たこの世界と。
つまりはちょっとゆがんだおとぎ話だ。
それでもそういう話の中にはちょっといいところがある。

そうそう、こういう文章見ると、素直にいいなと思う。なんということのない話で寓話というほど作為的でもなく、それでちょっといいというのがすごくいいと思う。*1


お話は、この世界で自分をつぶさずに生きていくにはみたいなことがそれとなく書かれていて、良かったです。
ワインをあたためて、蜂蜜と丁字(スパイス)を入れてというの、ちょっとやってみたい。



後は蛇足です...  orz
ところで、よしもとばななさんの小説といえばちょっと不幸な環境で育った女の子と、似たもの同士の男がであって自分たち特別だからみたいな話に、そういうのはもういいよ!と思ったことがあった。とかげくらいがその路線のピークだと思ってて、その後は意図的に距離を置いてたと思う。
主人公にどうしても感情移入できない。

でもそのうち、作者も感情移入なんてしてないなと思った。それどころか、作中の人物はそういう人なんだからそういうように書いてるんだなと思った。なんでか怪しいけどとにかくそう思った。

こんなに感覚的ですらすら書いたような(感じに見える)一人称なんだけど、実態としてあるのは三人称なんだなと思った。そんなの聞いたことないけど、すごい超絶技巧で書いてるんだなと思った。
それから読めるようになったというか、好きになった。だから、以前好きだったけど今はちょっと.. という人がいたら、また読んでみるといいと思う。

*1:英語だとpretty goodみたいな。